未払い残業代裁判例

残業代未払い請求訴訟の判例

トラックドライバー

大阪地方裁判所 平成28年12月16日判決

トラック運転手が、未払いの残業代を請求した事案。
会社側は、トラック運転手との労働契約では、歩合制に残業代が含まれているとして争った。
裁判所は、会社側の主張を裏付ける契約書や労働条件通知書のような客観的証拠はなく、契約締結時の労働条件確認書にも、残業代が支給されない旨の記載はないとして、トラック運転手の残業代の請求を認めた。

横浜地方裁判所相模原支部 平成26年4月24日判決

トラック運転手が、未払いの残業代を請求した事案。
運転手の出荷場や配送先における待機時間は、労働実態に照らすと実作業時間に当たり、会社の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるものとされた。待機時間中に運転手がトイレに行ったり、コンビニに買い物に行くなどしてトラックを離れる時間があったとしても、これを休憩時間であると評価することはできないとされた。
会社側は、残業代を業績給により支払っていると主張したが、裁判所は、一定額の手当を残業代に代えて支払うことが適法とされるためには、通常の労働時間に相当する部分と残業代に当たる部分を明確に判別できることが必要であるとし、運転手が残業手当として受領している給与には、通常の労働時間に相当する部分が含まれており、仮に残業代に当たる部分が存在するとしても、これを通常の労働時間に相当する部分と明確に区別することはできないことから、会社の主張は認められないとした。


医療従事者

大阪地方裁判所 平成22年7月15日判決

看護師らが病院に対し、未払いの給与を求めた事案です。
看護師らのタイムカードの出勤打刻時から所定始業時間までの間、及び、所定終業時間から退勤打刻時までの間が、労働時間に当たるかが争点となりました。
看護師らは、タイムカードの打刻時間が労働時間に当たると主張しました。
これに対し、病院側は、タイムカードのほかにも所属長が実労働時間を記入する個人別勤務状況表が作成されているほか、法人として勤務時間を記録化した勤務時間確認書が作成されており、タイムカードの打刻はあくまで出退勤の事実を記録するものに過ぎない。看護師らは出勤後着替える前に始業の打刻をし、終業後着替えた後に終業の打刻をしていたものであり、また、着替えの時間に5分ないし10分程度を要していたのであって、タイムカードでは実労働時間の把握はできないと主張しました。
裁判所は、病院側がタイムカード以外の客観的な証拠を提出できないことから、タイムカードの出勤打刻後、退出打刻までの間、休憩時間を除くほか業務に従事していたと認めるのが相当と判断し、看護師らの労働時間はタイムカードの打刻時刻を基準として、出勤打刻時から所定始業時間までの間及び所定終業時間から退勤打刻時まではそれぞれ時間外労働として割増賃金支払の対象となるとしました。


警備員

東京地方裁判所 平成10年6月12日判決

受付管理、防火管理、防犯管理、保安管理、巡回等の業務に従事していた警備員が、会社に対し未払い賃金を求めた事案です。
本件では、仮眠時間を含む休憩時間が労働時間に該当するのかが争点となりました。
裁判所は、本件の休憩時間では、有事即応の態勢を取り、通常の業務遂行の範囲内で生じることが想定される事態が生じた場合には、適切に対応して労務を遂行しなければならない職務上の義務を課されており、かつ、適時にこの義務を履行することができるようにするために、警備室において休憩することを指示して場所的に拘束し、もって使用者の指揮命令下に置いているような状況だったことから、本件の休憩時間は労働時間に当たると判断しました。